喪失体験が、気づかせてくれた。
物語が伝えようとしていた本質は、限りなく深い。心が大きく揺さぶられた。
子供の父親を失った数年前の体験に重ね合わせて見たから、
腰のあたりで生じたエネルギーみたいなものが背中全体に広がって、
そのゾクゾクした感じが、頭の中を包み込む感じがした。
意識が、ふんわりと別世界に連れていかれる感じ。
大きく息を吐いた。これまで見た中で、一番心に届く映画。
これから先も、この気持ちが更新される事は、ないような気がする。
1994年に公開されたディズニーのアニメーション映画が、
新しく生まれ変わった。
アフリカのサバンナで本物の動物が撮影されたような作りになっていた。
フルCGの“超実写版”。
あまりのリアルさに『ライオン・キング』の世界に没頭していた。
ジョン・ファヴロー監督の『ライオン・キング』は超実写で、
自然の美しい景色に豪華な音楽が絶賛されたが、
私にとっては、子供の父親を失った経験と重ね合わせて見た事で、
動物達のセリフの一言一言が、心の中に深く、深く入ってくる作品だった。
シングルマザーの母KARIN(かりん)毎日が、仕事と家事で手いっぱい。
やらなければいけない事がたくさんあるような気がして気持ちにゆとりがなく、まとまった時間が必要な映画を見る事など滅多にない。
映画館から帰ってきた息子が、
「もう一回見たくなる映画は、初めてだ」というので、彼の気持ちをそんな風に動かしたものが何だったのかを、確かめてみたくなったのがきっかけだった。
登場人物が動物なのがいい。
人間だと自分と重ね合わせてしまってリアルすぎるけれど
動物だから父親の死という出来事とも、少し距離感が保てる。
父親を失った息子との関りに悩むお母さんがいらしたら是非、
お勧めしたい作品だ。
と言っても、父親を亡くしてある程度気持ちが整理できた状態でないと、
心が揺さぶられすぎる気がするので、タイミングが重要だと思うけれど、
父親を亡くして7年目、わが家にとっては、本当にベターなタイミングでの出会いでグリーフ体験があるからこそ深く味わえる映画でした。